押印廃止と行政書士のコンプライアンス
2021年10月22日
令和2年11月13日、河野内閣府特命担当大臣が「民間から行政への手続の中で、押印を求めている行政手続が14,992種類のうち14,909種類、全体の99%以上の14,909種類について廃止あるいは廃止の方向で準備する」と発表し、押印廃止は急速に進みました。
行政書士の主業務である建設業の許可申請においても押印廃止は進み、行政書士の職印以外一切の押印が不要となりました。
私が行政書士登録をした平成16年頃は、建設業の許可申請書は依頼者さんの印による袋とじが必要でした。不備があった時は大問題、どんな些細なミスでも差し替えが必要となってしまったら、袋とじを開き書類を差し替えた後、依頼者さんに再度袋とじの押印を貰いに行かなければなりませんでした。
その後、袋とじが不要となり、また、書類作成にかかる代理権が付与され、簡便化が進みました。この変更は、申請者さんにも過度な負担をかけるものでしたので、非常に助かったものです。
今回の押印廃止では、お客様からの委任状ですら押印は不要です。
今までは、申請書類が完成し、お客様に押印する際に内容の説明をし、確認をしていただいていましたが、押印廃止後は申請書類をお客様に見せることなく提出することができてしまいます。
これを単に仕事が楽になったととらえるのは非常に危険です。もし、お客様が確認もしていない申請で何か問題があった場合には、全ての責任は行政書士が負うことになるでしょう。
私は押印廃止となった後でも、お客様に説明をする際に押印をお願いするようにしています。
押印廃止で業務が楽になったと思うのではなく、これまで以上に高い職業倫理とコンプライアンスが求められていると考えるべきではないでしょうか。