個人事業主の節税対策ベスト10 | 伸びている経営者が必ずやっているキャッシュ最大化術

「税金が高すぎて、手元にお金が残らない…」
「経費になるもの、ならないものの境界線がわからない」
「合法的に税金を安くする、裏技のような方法はないの?」
こんにちは。「税理士コラボネット」の小林です。確定申告の時期が近づくたびに、重くのしかかる税金の悩み。一生懸命働いて売上を上げたのに、税金をごっそり持っていかれては、事業へのモチベーションも下がってしまいますよね。
実は、個人事業主には、サラリーマンにはない強力な「節税」の武器がたくさん用意されています。これらを知っているか知らないかで、生涯の手取り額には数百万、数千万円の差がつきます。
この記事では、プロの視点から選りすぐった「個人事業主の節税対策ベスト10」をランキング形式で紹介します。基本的な「控除」の活用から、意外と見落としがちな「経費」の積み上げ方、さらには知る人ぞ知る応用テクニックまで、網羅的に解説します。
この記事を読めば、あなたは「守り」の納税者から、「攻め」の経営者へと変われるはずです。
目次
節税は「守り」ではなく「攻め」の経営戦略
具体的なテクニックに入る前に、一つだけ重要なマインドセットをお伝えします。それは、「節税は経営者の義務である」ということです。
脱税はNGだが、節税は義務。キャッシュを残して事業に投資せよ
まず大前提として、「裏技」という言葉に騙されて、脱税と節税を混同してはいけません。
ネットやSNSでは「領収書を買う」「売上を隠す」「プライベートな旅行を全額経費にする」といった違法行為を、あたかも「節税の裏技」のように紹介しているケースがあります。
これらは節税ではなく、明確な「脱税(犯罪)」です。「バレないだろう」という安易な気持ちで行う脱税は、重加算税などの重いペナルティが課されるだけでなく、銀行からの融資がストップするなど、社会的信用を一瞬で失うリスクがあります。
しかし、税制で認められたルールを最大限に活用して税金を減らす「節税」は、経営者が会社(事業)と家族を守るための正当な権利です。無駄な税金を払うくらいなら、そのお金を新しい機材の購入や広告宣伝、あるいは将来のための蓄えに回すべきです。手元にキャッシュ(現金)を残すことこそが、事業を長く続けるための最大の秘訣です。
本記事で紹介するのは、すべて税法に則った「合法的なテクニック」です。安心して実践してください。
節税の基本は「経費を積む」か「控除を増やす」の2つだけ
個人事業主の税金(所得税・住民税・国民健康保険料など)は、基本的に「課税所得」に対してかかります。課税所得を減らす方法は、大きく分けて2つしかありません。
- 必要経費を漏れなく計上する
- 所得控除を最大限に活用する
この2つを徹底的に行うことが、節税のすべてです。それでは、効果の高い順に具体的な対策を見ていきましょう。
【効果絶大】これだけはやるべき!「控除」を活用した節税対策TOP4

まずは「控除」です。経費と違ってキャッシュアウト(お金の支出)を伴わない、あるいは将来の自分への貯金がそのまま節税になるものが多く、最も優先順位が高い対策です。
1. 青色申告特別控除(最大65万円):まずはここから!会計ソフトでクリア
節税の王様とも言えるのが「青色申告」です。事前に税務署に届け出を出し、複式簿記で帳簿をつけるだけで、最大65万円を所得から差し引くことができます。
税率が20%(所得税10%+住民税10%)の人なら、これだけで年間13万円の節税になります。国民健康保険料への影響も含めれば、効果はさらに大きくなります。
「複式簿記なんて難しくてできない…」という方も安心してください。現在はクラウド会計ソフトを使えば、家計簿感覚で入力するだけで、青色申告に必要な帳簿が自動で作成できます。まだ白色申告の方は、今すぐ青色申告への切り替えをおすすめします。
2. 小規模企業共済:個人事業主の退職金制度。全額控除の最強ツール
国の機関(中小機構)が運営する、個人事業主のための退職金積み立て制度です。
- メリット: 掛金は月額1,000円~7万円の間で自由に設定でき、その全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)になります。
- 効果: 月7万円(年84万円)積み立てれば、税率30%の人で年間約25万円の節税になります。
- 出口: 事業を廃業した際などに受け取る共済金は、「退職所得」扱いとなり、税制面で非常に優遇されています。
預金で貯金するくらいなら、こちらに回した方が圧倒的にお得です。まさに国が用意した「合法的な裏技」とも言える最強の節税商品です。
3. iDeCo(個人型確定拠出年金):老後資金を作りながら税金を減らす
こちらも掛金が全額所得控除になる制度です。投資信託などで運用し、60歳以降に受け取ります。
- メリット: 掛金の全額控除に加え、運用益も非課税。
- 注意点: 原則60歳まで引き出せません。
小規模企業共済と併用が可能なので、資金に余裕があればダブル加入で控除額を最大化しましょう。
4. ふるさと納税(寄附金控除):実質負担2,000円で返礼品をゲット
好きな自治体に寄附をすることで、寄附額から2,000円を引いた額が税金から控除され、さらに返礼品(肉、米、日用品など)がもらえる制度です。
厳密には「節税(税金が減る)」というよりは「税金の前払い+豪華なおまけ」ですが、生活費(食費など)を浮かせることができるため、実質的なキャッシュフロー改善効果は絶大です。個人事業主は収入が確定する年末ギリギリまで上限額が読みにくいのが難点ですが、シミュレーションサイトなどを活用して積極的に利用しましょう。
【経費編】見落としがちな「経費」の積み上げテクニックTOP3

次は「経費」です。事業に関係する支出は漏れなく経費にするのが鉄則ですが、判断に迷うグレーゾーンや、特例を使ったテクニックが存在します。
5. 家事按分(家賃・光熱費):自宅兼オフィスの費用を経費化するルール
自宅で仕事をしている個人事業主にとって、最大の節税ポイントです。家賃、電気代、インターネット通信費、スマホ代、さらには持ち家の固定資産税や住宅ローンの利息なども、事業で使用している割合(事業供用割合)の分だけ経費にできます。
- 家賃: 仕事部屋の床面積や、使用時間などを基準に按分します(例:30%~50%)。
- 光熱費: コンセントの数や使用時間で按分します。
重要なのは「客観的で合理的な基準」であること。税務調査で聞かれたときに、「この部屋は仕事専用で、全体の面積の〇〇%にあたるため」と明確に答えられれば問題ありません。これを活用しないのは、みすみすお金を捨てているようなものです。
6. 少額減価償却資産の特例:30万円未満のパソコン等を一括経費に
通常、10万円以上の備品(パソコンやカメラなど)は「固定資産」として数年にわたって少しずつ経費(減価償却)にする必要があります。
しかし、青色申告をしている個人事業主なら、1個あたり30万円未満のものであれば、購入した年に全額を一括で経費にすることができます(年間合計300万円まで)。
利益が出すぎた年の年末に、古くなったパソコンを買い替えたり、高機能なオフィスチェアを購入したりして利益を圧縮する際によく使われるテクニックです。
7. 短期前払費用の特例:翌年分の家賃や保険料を年内に支払って経費化
通常、経費は「その年にサービスを受けた分」しか計上できません。しかし、一定の要件(契約に基づき継続的に受けるサービスで、翌年1年分を支払うなど)を満たせば、向こう1年分の費用を、支払った年に全額経費にすることができます。
- 対象: 家賃、サーバー代、会費、保険料など。
- 効果: 年末に翌年1年分の家賃を支払えば、その分だけ当期の利益を減らせます。
ただし、一度この処理を始めたら、翌年以降も継続して年払いにする必要があります。
【上級編】さらに手残りを増やす応用テクニックTOP3
ここからは少し応用的な、しかし効果の大きいテクニックです。
8. 青色事業専従者給与:家族への給与を経費にする
生計を一にする配偶者や親族が事業を手伝っている場合、事前に税務署へ届け出ることで、その給与を全額経費にできます。
- メリット: 事業主の高い税率がかかる所得を、家族(専従者)に分散させることで、世帯全体の税負担を下げられます(所得分散効果)。
- 注意点: 配偶者控除(38万円)などは受けられなくなります。給与額は「仕事の内容に見合った適正な金額」である必要があります。
9. 経営セーフティ共済(倒産防止共済):掛金を損金にしつつ資金確保
本来は取引先が倒産した際の資金調達制度ですが、節税目的で利用されることが多いです。
- メリット: 掛金(月額5,000円~20万円)を全額必要経費にできます(年間最大240万円)。
- 解約: 40ヶ月(3年4ヶ月)以上加入していれば、解約時に掛金が全額戻ってきます。
- 活用法: 利益が出ている年に積み立てて経費にし、大規模な修繕や設備投資、あるいは赤字になりそうな年に解約して収入計上することで、利益の平準化(課税の繰り延べ)が可能です。
※2024年の税制改正で、解約後の再加入に関する制限が設けられたので注意が必要です(解約後2年間は経費算入不可)。
10. 法人化(法人成り):売上が伸びたら検討すべき最終手段
所得税(個人)は累進課税で最大45%(住民税合わせると55%)まで上がりますが、法人税は最大でも約23%(実効税率で約30%〜34%)程度で頭打ちになります。
一般的に、課税所得が800万円~900万円を超えたあたりから、法人化した方が税金が安くなる可能性が高いと言われています。
また、法人化することで、自分自身に役員報酬を払い「給与所得控除」を受けることができたり、社宅制度を活用したりと、個人の時とは比べ物にならないほど節税の幅が広がります。
▶ 法人化のベストタイミングは?売上・利益いくらから?プロの判断基準
節税で「貧乏」にならないための注意点
ここまで節税策を紹介してきましたが、最後に重要な注意点をお伝えします。
無駄遣いは節税ではない(キャッシュアウトの罠)
「税金で取られるくらいなら使ってしまえ」と、不要な高級車を買ったり、過度な接待をしたりするのは本末転倒です。
経費を使うということは、手元の現金(キャッシュ)が減るということです。例えば、税率30%の人が100万円の経費を使っても、減る税金は30万円だけ。手元からは70万円のお金が消えています。
「お金を使わずにできる節税(控除の活用)」や「将来のリターンにつながる投資」を優先しましょう。
銀行融資を考えるなら「利益」も必要
過度な節税で利益をゼロや赤字にしてしまうと、決算書の見た目が悪くなり、銀行からの融資が受けにくくなる可能性があります。
事業拡大のために資金調達を考えている場合は、あえて適正な税金を払って「黒字」決算を作り、信用を積み重ねることも重要な経営戦略です。
「個人事業主の節税対策ベスト10」まとめ
- マインドセット:節税は義務だが、脱税はNG。キャッシュを残すことが目的。
- 控除(優先度高):青色申告、小規模企業共済、iDeCo、ふるさと納税。
- 経費(積み上げ):家事按分、30万未満の資産特例、短期前払費用。
- 応用(効果大):専従者給与、経営セーフティ共済、法人化。
- 注意:無駄な出費は避ける。融資対策とのバランスを見る。
節税は、知っている人だけが得をする世界です。まずは「青色申告」と「小規模企業共済」から始めてみてください。そして、日々の経理をクラウド会計ソフトで効率化し、正確な数字を把握することが、最強の節税への第一歩です。
「個人事業主の節税」に関するよくある質問
誰にでもおすすめでき、かつ効果が大きいのは「青色申告特別控除(65万円)」と「小規模企業共済」です。この2つだけで年間100万円以上の所得控除を作ることも可能です。売上が大きく伸びているなら、「法人化」が最大の節税効果を生む可能性があります。
「売上の〇割までならOK」という明確な決まりはありません。業種によって経費率は全く異なるからです(卸売業なら高く、ライターなら低いなど)。重要なのは割合ではなく、「事業に必要だったか」という事実と「領収書などの証拠」です。これらが揃っていれば、割合が高くても認められます。
電車やバスの運賃、慶弔費、自動販売機の購入費など、領収書が出ない出費については、「出金伝票」に日付、支払先、内容、金額を記録しておけば経費として認められます。交通系ICカードの利用履歴を印字して保存しておくのも有効です。
はい、なります。ただし、プライベートでも使っている場合は「家事按分」が必要です。走行距離や使用日数などを記録し、「週5日は仕事で使うから7割を経費にする」といった合理的な基準で計算します。車両本体の購入費は、減価償却を通じて数年かけて経費にします。
住宅ローンの「元本部分」は経費になりませんが、「利息部分」は事業使用割合に応じて経費にできます。 また、建物の固定資産税や火災保険料も、事業使用割合分を経費計上可能です。ただし、住宅ローン控除を受けている場合は、事業使用割合を50%以下に抑えないと控除が受けられなくなるケースがあるため注意が必要です。
はい、可能です。副業で「開業届」と「青色申告承認申請書」を出し、事業所得として認められれば、青色申告特別控除が使えます。また、事業で赤字が出た場合、給与所得と相殺(損益通算)して、源泉徴収された税金を取り戻すことも可能です。ただし、単なる趣味レベルではなく、継続的な営利活動と認められる必要があります。
原則として家族への給与は経費になりませんが、青色申告をして「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出すれば、全額経費にすることができます。ただし、配偶者控除や扶養控除の対象外となるため、トータルの税負担がどうなるかシミュレーションが必要です。
資金の流動性を重視するなら、小規模企業共済を優先すべきです。iDeCoは60歳まで原則引き出せませんが、小規模企業共済は貸付制度が利用できたり、廃業時にいつでも受け取れたりするなど、柔軟性が高いからです。資金に余裕があれば両方活用するのがベストです。
税金をゼロにするために無理やり赤字にするのは、資金繰りを悪化させるためおすすめしません。しかし、将来のための設備投資や広告宣伝を行って、結果として赤字になるのは戦略としてアリです。青色申告なら、赤字を翌年以降3年間繰り越して、将来の黒字と相殺(繰越控除)できるため、無駄にはなりません。
税務署は「正しい申告方法」は教えてくれますが、「どうすれば税金が安くなるか(節税)」は教えてくれません。それは税務署の仕事ではないからです。個別の事情に合わせた具体的な節税対策や、ここで紹介したようなテクニックの適否相談は、税理士に依頼することをおすすめします。





