相続に本当に強い税理士の選び方｜数百の事務所を見てきたプロが教える5つの条件

相続が発生し、税理士に依頼しようと決めたものの、いざインターネットで検索すると「相続専門」「相続に強い」と謳う事務所が数多く見つかり、どこに相談すれば良いか途方に暮れてしまう、という方は少なくありません。

こんにちは。「税理士コラボネット」の小林です。私は、全国の数百という税理士事務所の先生方から直接お話を伺う中で、「本当に相続に強い事務所」と「そうでない事務所」には、明確な違いがあることを知っています。

そして、その違いは、納税額にして数百万円、時には数千万円の差を生むことさえあります。それだけでなく、ご家族間の円満な関係を守れるかどうかにも関わる、非常に重要な選択です。

この記事では、あなたが後悔しないために、数多くの事務所を見てきたプロの視点から、「相続に本当に強い税理士」を見抜くための5つの具体的な条件を解説します。

大前提：なぜ「相続に強い税理士」を選ぶ必要があるのか？

そもそも、なぜどの税理士でも良いわけではないのでしょうか。それは、相続税申告が、税理士業務の中でも極めて特殊で、高い専門性が求められる分野だからです。特に、以下の2つの点で専門家の実力差が顕著に現れます。

• 土地評価（不動産評価）
  相続財産の中で最も評価が難しいのが「土地」です。経験の浅い税理士は、路線価をそのまま当てはめて計算するだけの場合がありますが、相続に強い税理士は、必ず現地を訪れたり、航空写真を確認したりして、土地の形、騒音、日当たりといった「減価要因（評価額を下げる要素）」を探し出します。このひと手間で、納税額が大きく変わるのです。
• 二次相続まで見据えた遺産分割のアドバイス
  今回の相続（一次相続）だけを考えて遺産分割を行うと、次に配偶者が亡くなった際の相続（二次相続）で、子供たちが多額の税金を負担することになるケースがあります。相続に強い税理士は、家族構成や財産状況を俯瞰し、家族全体で見て最も税負担が少なくなるような、長期的な視点でのアドバイスをしてくれます。

プロが教える「相続に本当に強い税理士」を見抜く5つの条件

では、具体的にどのような基準で専門家を見極めればよいのでしょうか。初回相談などで、ぜひ以下の5つの条件を確認してみてください。

条件１．相続税の「年間申告件数」を公開しているか

「経験豊富」という言葉は曖昧です。その経験は、具体的な「数」で測ることができます。本当に相続を専門としている事務所は、年間に数十件、多いところでは100件以上の申告を手がけています。一方で、一般的な税理士事務所では、年に数件程度ということも珍しくありません。相談時に「先生の事務所では、年間に何件くらいの相続税申告を手がけていますか？」と直接質問してみましょう。明確な数字を提示できる事務所は、それだけ実績に自信がある証拠です。

条件２．「書面添付制度」を積極的に活用しているか

「書面添付制度」とは、税理士が「この申告書は、私たちが責任を持って適正に作成しました」という品質保証書のようなものを添付する制度です。この書面が添付された申告書は、税務署からの信頼度が高まり、税務調査の対象となる可能性が低くなるという大きなメリットがあります。この制度の活用は任意ですが、相続に強い事務所ほど、申告内容への自信の表れとして、積極的に活用している傾向にあります。

条件３．土地の評価方法について、具体的な説明があるか

初回の相談時に、土地の資料（公図や測量図など）を持参し、評価について質問してみましょう。その際、「路線価を元に計算します」という一般的な回答だけでなく、「この土地は形が不整形なので、評価額が下がる可能性がありますね」「隣に大きな建物があるので、日照権なども考慮できるかもしれません」といった、一歩踏み込んだ具体的な話が出てくる税理士は、経験豊富な可能性が高いです。

条件４．税務調査へのスタンスと実績が明確か

相続税申告は、他の税金に比べて税務調査に入られやすい傾向があります。そのため、万が一の場合の対応力も重要な判断基準です。「先生の事務所が関与した相続案件で、税務調査に入られる割合はどれくらいですか？」と質問してみましょう。申告の品質が高ければ、調査率は低くなるはずです。また、調査の際には、納税者の代理人として、しっかりと税務署に意見を主張してくれる姿勢があるかも確認しましょう。

条件５．他の専門家（弁護士・司法書士）との連携体制があるか

相続は、税金の問題だけでは終わりません。遺産分割で揉めてしまえば弁護士が、不動産の名義変更（相続登記）には司法書士が必要です。相続案件の実績が豊富な事務所は、これらの他の専門家と緊密な連携体制を築いています。何かトラブルが起きても、ワンストップで対応してくれる事務所は非常に心強い存在です。

相談時に確認すべき「魔法の質問」リスト

初回相談でこれだけは聞いておきたい、という質問をまとめました。

• 年間で相続税の申告を何件くらい扱っていますか？
• （もしあれば）私の土地の評価について、どのような点がポイントになりそうか、現時点で教えていただけますか？
• 税務調査率はどれくらいですか？また、調査の際の基本方針を教えてください。
• 書面添付制度は活用されていますか？
• もし、相続人間で揉めてしまった場合、弁護士の先生をご紹介いただくことは可能ですか？

ホームページのここをチェック！専門家探しのヒント

相談に行く前に、ホームページで事前にある程度の見当をつけることも可能です。

• 相続専門のサイトがあるか
  法人顧問などとは別に、相続税専門のウェブサイトを設けている事務所は、その分野に力を入れている証拠です。
• 相続に関する実績やお客様の声が豊富か
  具体的な申告事例や、相続を依頼したお客様からの感謝の声が多数掲載されているか確認しましょう。
• 料金体系が明確か
  相続税申告の料金体系が、遺産総額に応じて分かりやすく明記されているかも重要なポイントです。

相続税の申告は、ただでさえ心労の多い時期に行わなければならない、非常にデリケートな手続きです。だからこそ、心から信頼できるプロフェッショナルをパートナーに選ぶことが、何よりも大切になります。

この記事を参考に、ぜひあなたとご家族にとって最高の税理士を見つけてください。

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