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個人事業主の廃業手続き完全ガイド|届出期限と確定申告の注意点

2026年1月27日

「法人成りすることになったので、個人事業を閉めたい」「事情があって廃業することにしたけれど、税務署に何を提出すればいい?」「お店に残っている在庫や、仕事で使っていた車はどう処理すればいいの?」

こんにちは。「税理士コラボネット」の小林です。事業を始める時は「開業届」一枚で済みますが、実は事業を辞める時(廃業)の方が、税金の手続きははるかに複雑で厄介です。

単に届出を出して終わり、ではありません。
残った在庫をどう処分するか、固定資産をどう引き継ぐかによって、廃業した後にもかかわらず思わぬ税金がかかることがあります。また、「予定納税」や「事業税」の処理を間違えると、無駄な現金を支払うことになりかねません。

この記事では、個人事業主が廃業する際に必要な「届出」の完全リストと、間違いやすい「最後の確定申告」のルール、そして法人成りする場合の注意点まで、専門家の視点から徹底解説します。
「立つ鳥跡を濁さず」。きれいさっぱりと事業を清算し、次のステージへ進むためのガイドとしてお役立てください。

目次

立つ鳥跡を濁さず!個人事業を廃業する際の流れ

まずは、廃業手続きの全体像を把握しましょう。大きく分けて2つのフェーズがあります。

手続きは「届出」と「最後の確定申告」の2段階

  1. 各種届出書の提出: 税務署や都道府県税事務所などに「事業を辞めました」と伝える手続きです。期限が決まっているので速やかに行います。
  2. 廃業年の確定申告: 1月1日から廃業日までの所得を計算し、翌年の2月16日〜3月15日(または準確定申告なら4ヶ月以内 ※死亡時のみ)に申告・納税します。これが「最後の決算」となります。

廃業日はいつにする?(年末か、法人設立の前日か)

廃業届には「廃業日」を記載します。いつにするかは自由ですが、以下のポイントで決めるとスムーズです。

  • 完全廃業の場合: 実際に店舗を閉めた日や、取引が完了した日。キリよく「12月31日」にする方も多いです(減価償却費などを1年分計上できるため)。
  • 法人成りの場合: 「法人設立日の前日」にするのが一般的です。これにより、事業の空白期間を作らずにスムーズに移行できます。

1. 税務署・都道府県への「届出」チェックリスト

廃業が決まったら、まずは書類の手続きです。提出漏れがないようチェックしましょう。

必須:「個人事業の開業・廃業等届出書」(1ヶ月以内)

最も基本的な書類です。所轄の税務署へ提出します。

  • 期限: 廃業日から1ヶ月以内
  • 内容: 廃業日、廃業の事由(法人成り、事業不振など)を記載します。

参照:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続 | 国税庁

必須(青色の方):「所得税の青色申告の取りやめ届出書」

青色申告をしている人は、これを忘れると「事業は辞めたのに青色申告の義務だけ残る」という変な状態になります。

  • 期限: 廃業しようとする年の翌年3月15日まで
  • 注意: 廃業届と一緒に提出してしまうのが確実です。

参照:[手続名]所得税の青色申告の取りやめ届出 | 国税庁

重要:「事業廃止届出書」(消費税・インボイス登録者)

消費税の課税事業者(インボイス登録事業者を含む)は、消費税に関する届出も必要です。

  • 消費税の事業廃止届出書: 課税事業者が廃業する場合に提出。
  • 適格請求書発行事業者の登録の取りやめ届出書: インボイス登録をしている場合、これを提出して登録を抹消します。

忘れずに:「個人事業税」の廃業届(都道府県税事務所へ)

税務署(国)だけでなく、都道府県にも連絡が必要です。「個人事業税」を管轄している都道府県税事務所へ提出します。

  • 期限: 都道府県により異なりますが、概ね廃業から10日〜1ヶ月以内。
  • 様式: 各自治体のホームページからダウンロードできます(「事業開始・廃止等申告書」など)。

従業員がいた場合:「給与支払事務所等の廃止届出書」

従業員や専従者を雇っていて給与を支払っていた場合は、この届出書を税務署へ提出します。また、労働保険(労基署・ハローワーク)や社会保険(年金事務所)の資格喪失手続きも必要になります。

2. ミス多発!「最後の確定申告」特有のルール

廃業手続きの最難関が、この「最後の確定申告」です。
通常とは異なる「廃業特有の処理」が必要になり、ここを間違えると税務調査で指摘されるリスクが高まります。

在庫(棚卸資産)はどうする?「みなし譲渡」の落とし穴

廃業した時点で売れ残っている商品(在庫)がある場合、「在庫のまま終わり」にはできません。
この在庫は、「事業主個人が、家事消費のために買い取った(自家消費)」とみなされます。

  • 処理: 在庫を事業主(プライベートの自分)に売ったとして、売上に計上しなければなりません。
  • 金額: 通常の販売価格の70%(または仕入価格)以上の金額で計上します。

つまり、実際には売れてお金が入ってきていなくても、売上が立ち、税金がかかるということです。これを「みなし譲渡」といいます。在庫を大量に抱えたまま廃業すると、税金だけ発生して資金繰りが苦しくなるので注意が必要です。

車やパソコン(固定資産)を自家用にする場合も税金がかかる?

事業で使っていた車やパソコンを、廃業後にプライベートで使い続ける場合も同様です。
事業主個人へ売却したとみなされ、「譲渡所得(または事業所得の雑収入)」として課税対象になります。

  • 消費税の注意点: インボイス登録事業者(課税事業者)の場合、この「みなし譲渡」に対しても消費税がかかります。在庫や固定資産を自分に売ったことにして、その分の消費税を納める必要があります。ここを申告漏れするケースが非常に多いです。

貸倒引当金の繰戻し処理と、減価償却費の月割り計算

  • 貸倒引当金: 前年に経費計上した貸倒引当金がある場合、廃業年の所得として全額を「戻し入れ(収入計上)」する必要があります。
  • 減価償却費: 廃業した年(1月1日〜廃業日)までの月数分だけを「月割り」で計算して経費にします。1年分全額は入れられません。

まだ払うの?廃業後の税金(予定納税・事業税)の扱い

「廃業届を出したから、もう税金の通知は来ないはず」と思っていると、痛い目を見ます。

予定納税は「減額申請」でストップできる

前年の所得税額が多かった場合、6月頃に「予定納税」の通知が来ます。廃業していても、自動的には止まりません。
そのままにしておくと督促状が来てしまうため、必ず税務署へ「予定納税額の減額申請書」を提出しましょう。「廃業したため」という理由で、納税額を0円にすることができます。
予定納税の通知が来た!これは何?分割納付の仕組みと計算方法

翌年払う「事業税」は、今年の見込額を経費に入れられる

個人事業税は、前年の所得に対して翌年(廃業した年の翌年)に課税されます。
通常、事業税は「支払った年」の経費になりますが、廃業した場合は「翌年払う予定の事業税(見込額)」を、特例として廃業年の経費に計上することが認められています(所得税基本通達37-7)。
これをやるのとやらないのとでは、最後の税金が大きく変わります。忘れずに計上しましょう。

「法人成り」の場合の注意点

個人事業を廃業して法人を設立する場合、資産や負債の引き継ぎ方が重要になります。

個人から法人へ資産を引き継ぐ方法(売買・現物出資)

個人事業で使っていた在庫や固定資産を法人に移すには、主に3つの方法があります。

  • 売買: 個人が法人に売る。個人には売却益(譲渡所得等)が発生し、法人には買取資金が必要。
  • 現物出資: 資産を法人に出資する。資本金が増える効果があるが、手続きが少し複雑。
  • 賃貸: 個人が持ち続け、法人に貸し出す(賃料をもらう)。

どの方法を選ぶかで、個人の税金(譲渡所得)や法人の資金繰りが変わります。

廃業日と法人設立日の関係

「個人の廃業日=12月31日」「法人の設立日=1月4日」などのように、空白期間ができないように設定するのが理想です。
特に消費税の免税期間(法人設立後最大2年間)を最大限活用するためのタイミング戦略などもあるため、設立前に税理士に相談することをおすすめします。
法人化のベストタイミングは?売上・利益いくらから?プロの判断基準

複雑な廃業処理を税理士に相談する3つのメリット

「廃業するのにお金をかけたくない」と思うかもしれませんが、廃業こそ専門家の手が必要です。

1. 「みなし譲渡」などの複雑な税金計算を正確に行える

在庫や固定資産の自家消費(みなし譲渡)の計算や、消費税の調整は非常に複雑です。ここを間違えると、廃業後に税務署から「追徴課税」の連絡が来ることになります。最後をきれいに終わらせるために、正確な計算が不可欠です。

2. 廃業コストを漏れなく経費計上し、節税できる

店舗の原状回復費用、在庫処分損、事業税の見込控除など、廃業時には特有の経費が発生します。これらを漏れなく計上することで、最後の税金を最小限に抑えることができます。

3. 税務調査のリスクを減らし、安心して次のステップへ進める

実は、廃業した後に税務調査が入るケースは少なくありません。「もう事業がないから調べられないだろう」という油断や、最後の申告での計算ミスを狙われるからです。
税理士に依頼して適正な申告書を提出し、税務代理権限証書をつけてもらえば、廃業後の税務調査リスクを大幅に減らすことができます。安心してリタイヤ生活や新しい事業に進むための「安心料」と言えます。

「個人事業主の廃業手続き」まとめ

  • 届出:税務署へ「廃業届」「青色取りやめ届」「事業廃止届(消費税)」などを提出。
  • 期限:原則1ヶ月以内(青色は3/15まで)。都道府県税事務所も忘れずに。
  • 確定申告:在庫や固定資産の「みなし譲渡」や、消費税の処理に要注意。
  • 特例:事業税の見込額を経費に入れたり、予定納税を減額申請したりできる。
  • 相談:最後だからこそ税理士に頼み、追徴課税のリスクを断つのが賢明。

事業を始める時と同じくらい、終わらせる時もエネルギーが必要です。
しかし、適切な手続きを行えば、無駄な税金を払うことなく、すっきりと幕を引くことができます。
最後の確定申告だけでも、税理士のサポートを受けることを検討してみてはいかがでしょうか。

日々の記帳をクラウド会計ソフトで行っている場合は、廃業手続きのガイド機能がついていることもあるので確認してみてください。

税理士探しのご相談はこちら

「廃業・閉店」に関するよくある質問

A.国税庁のホームページからダウンロードできるほか、税務署の窓口でもらえます。提出は郵送でも可能ですし、e-Tax(電子申告)を使えば自宅からオンラインで提出できます。freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトにも、廃業届を作成する機能がついている場合があります。

A.「事業を取りやめた日(最後の日)」です。届出を提出する日ではありません。店舗を閉鎖した日や、最後の売上が発生した日などを廃業日として記載します。キリよく12月31日に設定するケースも多いです。

A.所得が基礎控除(48万円)以下で赤字なら、税金が発生しないため確定申告の義務はありません。ただし、青色申告で赤字を繰り越していた場合や、源泉徴収された税金を取り戻したい場合(還付申告)、あるいは国民健康保険料の減免を受けたい場合は、赤字でも申告した方が有利です。

A.在庫を廃棄した場合、その処分費用や仕入原価は「廃棄損」として経費に計上できます。この場合、手元に資産が残らないため「みなし譲渡」の課税対象にはなりません。ただし、税務調査で証明できるよう、廃棄業者の請求書や廃棄した証拠写真などを必ず残しておいてください。

A.廃業日までに発生した売上であれば、入金が廃業後であっても、廃業した年の売上(売掛金)として計上します。廃業後に発生した雑収入(還付金加算金など)については、原則としてその翌年に確定申告が必要になる場合がありますが、少額であれば申告不要なケースもあります。

A.個人事業を廃業した場合、小規模企業共済の「共済金(退職金)」を受け取ることができます。受け取り方法は一括・分割などを選べ、税制上の優遇(退職所得控除)が受けられます。中小機構へ「共済金等請求書」と「廃業届の控え(または印鑑証明書)」を提出して手続きします。

A.廃業届だけでなく、別途「適格請求書発行事業者の登録の取りやめ届出書」を提出する必要があります。また、廃業した課税期間(1月1日〜廃業日)についての消費税の確定申告も必要になります。消費税は計算が複雑なので注意してください。

A.通常の確定申告と同様、翌年の2月16日から3月15日までです。廃業したからといってすぐに申告しなければならないわけではありません(死亡による準確定申告を除く)。忘れないように準備しておきましょう。

A.事業用資金の借入金は、廃業しても免除されません。個人として返済義務が残ります。もし返済が困難な場合は、弁護士に相談して債務整理(任意整理や自己破産など)を検討する必要があります。税金(消費税など)も免責されない債務なので、優先的に支払う計画が必要です。

A.廃業に伴う解雇であっても、少なくとも30日前の解雇予告(または解雇予告手当の支払い)が必要です。雇用保険や社会保険の資格喪失手続き、離職票の発行、源泉徴収票の交付なども速やかに行う必要があります。労務トラブルを避けるため、早めに事情を説明し誠実に対応しましょう。

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