インボイス登録、今からでも間に合う?登録しない場合のデメリットと税理士の役割

インボイス制度が始まってから時間が経ち、あなたの周りの事業者も続々と登録を進めているかもしれません。そんな中、「うちは免税事業者のままで本当に大丈夫だろうか…」「取引先から登録番号を聞かれたけど、どうしよう…」「今から登録するのは、もう手遅れなのだろうか?」と、決断できずに悩んでいる個人事業主・フリーランスの方は、実は非常に多くいらっしゃいます。
こんにちは。「税理士コラボネット」の小林です。全国の税理士の先生方とお話ししていても、この「インボイス登録」に関する相談は、今なお最も多いテーマの一つです。これは単なる税金の手続きではなく、あなたの今後の取引や事業の方向性を左右する、重要な「経営判断」だからです。
この記事では、まだ決断できずにいるあなたのために、「今からでも登録は間に合うのか」という疑問への答えから、「登録しない」場合のリアルなデメリット、そしてこの複雑な判断をサポートする税理士の役割まで、プロの視点で分かりやすく解説します。
インボイス登録は「今からでも」可能。ただし、あなたの取引先次第。
まず、一番の疑問にお答えします。インボイスの登録は、今からでも全く問題なく可能です。手遅れということはありません。
その上で、あなたが登録すべきかどうかの最も重要な判断基準は、たった一つ。「あなたの主な取引先が誰か?」ということです。
- BtoB(相手が事業者)がメインの場合
あなたの取引先は、あなたに支払った消費税分を、自社が納める税金から控除(仕入税額控除)したいと考えています。あなたがインボイス登録をしていないと、取引先はその控除が受けられず、損をしてしまいます。 - BtoC(相手が一般消費者)がメインの場合
一般の消費者は仕入税額控除を行わないため、あなたがインボイス登録をしているかどうかは、基本的に関係ありません。
つまり、あなたの事業がBtoB中心なら、インボイス制度への登録を検討する必要性が高くなります。
簡易診断あなたはインボイス登録をすべき?
ご自身の状況を整理するために、簡単な診断をしてみましょう。
- 質問1
あなたの主な顧客は、法人や個人事業主ですか? - 質問2
顧客から「インボイスの登録番号を教えてほしい」と、これまでに聞かれたことがありますか? - 質問3
今後、事業者向けのビジネスを拡大していきたいと考えていますか?
この質問に「はい」が多いほど、あなたは「インボイス登録を検討すべき」タイプと言えます。逆に「いいえ」が多い、例えば顧客のほとんどが一般消費者である場合は、「登録しない」という選択も有力な戦略となります。
インボイス登録を「しない」場合のメリット・デメリット

メリット
- 消費税の納税義務がない
これが最大のメリットです。受け取った消費税は、そのままあなたの利益(益税)となります。 - 経理処理がシンプルなまま
複雑な消費税の計算や申告が不要なため、事務負担が増えません。
デメリット
- 取引先を失うリスク
あなたの取引先(課税事業者)は、あなたとの取引では仕入税額控除が受けられないため、「インボイス登録をしている別の事業者に乗り換える」という判断をする可能性があります。これは、BtoB事業にとって最大のリスクです。 - 値引き交渉をされる可能性
取引先から、控除できない消費税分(10%)の値引きを要求されることがあります。これに応じると、実質的にあなたの手取りが減ることになります。 - 新規のBtoB取引で不利になる
新しい取引先を探す際に、「インボイス未登録」というだけで、候補から外されてしまう可能性があります。
インボイス登録を「する」場合のメリット・デメリット

メリット
- 既存のBtoB取引を維持・拡大できる
取引先に迷惑をかけることがなく、安心して取引を継続できます。 - 新規のBtoB取引で有利になる
インボイスを発行できることは、今や事業者間取引のスタンダードであり、信用に繋がります。 - 事業者としての信用度が向上する
課税事業者であることは、一定の売上規模があることの証明にもなり、社会的信用度が上がります。
デメリット
- 消費税の納税義務が発生する
これまで利益となっていた消費税を、国に納める必要が出てきます。 - 確定申告の事務負担が増える
消費税の確定申告という新たな事務負担(スポットでの依頼も可能)が発生します。
プロの視点:税理士はあなたの「戦略的判断」をサポートする
この複雑な選択において、税理士は単なる手続きの代行者ではありません。あなたの事業への影響を最小限に抑え、最適な道を選ぶための「戦略アドバイザー」となります。
- シミュレーションで損得を可視化
税理士に相談すれば、「登録した場合の納税額」と「登録せずに値引き交渉に応じた場合の手取り額」などを具体的にシミュレーションし、どちらが経済的に有利かを数字で示してくれます。 - 緩和措置(2割特例など)の活用
インボイス登録には、負担を軽減するための様々な経過措置や特例(例:売上の2割を納税額とできる「2割特例」)があります。税理士は、あなたの状況で最も有利な制度を的確に提案・適用してくれます。 - 価格交渉や事業転換のアドバイス
もし「登録しない」と決めた場合、取引先への説明や価格交渉をどう進めるべきか。あるいは、これを機にBtoC事業へ軸足を移すべきか。そうした経営戦略の相談にも乗ってくれます。
税理士は、税務だけでなく、あなたのビジネスモデル全体を理解した上で、最善の道筋を共に考えてくれるパートナーなのです。
「インボイス登録、どうする?」まとめ
- インボイス登録は今からでも可能。判断基準は「あなたの取引先が誰か」。
- BtoB事業がメインなら、取引を失うリスクを避けるために登録を検討する必要性が高い。
- BtoC事業がメインなら、あえて「登録しない」で納税負担を避けるのも有効な戦略。
- 登録する場合でも、「2割特例」などの緩和措置を活用すれば、負担を大きく軽減できる可能性がある。
- どちらを選ぶべきか迷ったら、税理士に相談して具体的な損得勘定をシミュレーションしてもらうのが最善手。
インボイス制度への対応は、今後のあなたの事業を左右する重要な分岐点です。一人で悩まず、ぜひ専門家の知見を活用してください。
当サイト「税理士コラボネット」では、インボイス制度に精通し、多くの個人事業主の相談に乗っている、信頼できる先生方をご紹介しています。あなたの状況に合わせた最適なアドバイスで、不安を解消するお手伝いができれば幸いです。
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