相続税申告は自分でできる?税理士に頼むべきかの判断基準とメリット・デメリット

ご家族が亡くなられ、深い悲しみの中、間もなくやってくるのが「相続税の申告」という現実的な問題です。その時、多くの方が最初に頭をよぎるのは、「この手続き、専門家に頼まずに自分でできないだろうか?」という疑問ではないでしょうか。
こんにちは。「税理士コラボネット」の小林です。相続税の申告は、法律上、ご自身で行うことが可能です。しかし、全国の税理士の先生方とお話していると、「ご自身で申告して、本来払う必要のない税金を納めてしまったケース」や「申告の誤りを税務署に指摘され、余計な税金(ペナルティ)がかかってしまったケース」が後を絶たない、という現実も耳にします。
この記事では、あなたが「自分で申告すべきか、税理士に頼むべきか」を冷静に判断できるよう、具体的な判断基準のチェックリスト、そしてそれぞれのメリット・デメリットを、プロの視点から公平に解説します。
結論条件次第で「自分でできる」が、多くの人は税理士に依頼した方が得策
いきなり結論から申し上げると、相続税の申告は、ごくシンプルなケースを除き、ほとんどの方が税理士に依頼した方が賢明です。
実際に、相続税の申告は非常に専門性が高いため、多くのケースで税理士が関与しています。これは「費用を払ってでも、専門家に依頼するメリットの方が大きい」と考える方が大多数であることを示しています。その最大の理由は、相続財産の評価、特に「土地の評価」が非常に複雑で、専門家が計算するかどうかで納税額が数百万円単位で変わることも珍しくないからです。
税理士に頼むべきか?5つの判断基準チェックリスト

あなたの状況が、税理士に頼むべきケースに当てはまるかどうか、以下の5つの項目でチェックしてみてください。一つでも当てはまれば、税理士への相談を強くお勧めします。
1.遺産に「土地(不動産)」が含まれていますか?
これが最も重要な判断基準です。預貯金と違い、土地の評価額は一律ではありません。土地の形、道路との接し方、周辺環境など、様々な「減価要因(評価額を下げる要素)」を専門家が見つけ出すことで、評価額を下げ、結果的に相続税を大きく節税できる可能性があります。この節税額が、税理士に支払う報酬を上回るケースは非常に多いです。
2.遺産の総額が「基礎控除額」を大きく超えそうですか?
相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除額があり、遺産総額がこれ以下であれば申告も納税も不要です。しかし、遺産総額がこの控除額を明らかに、また、大きく超える場合は、納税額も高額になります。金額が大きくなるほど、専門家による正確な申告と節税対策の価値は高まります。
3.相続人の間で意見の対立がある、またはその可能性がありますか?
遺産分割は、時として家族関係に亀裂を生じさせることがあります。税理士が中立的な第三者として関与し、専門的な視点から公平な分割案を提示することで、感情的な対立を避け、円満な話し合いをサポートしてくれる役割も期待できます。
4.平日に、役所や金融機関などを回る時間を確保することが難しいですか?
相続税の申告には、亡くなった方の戸籍謄本や預金残高証明書、不動産の登記事項証明書など、膨大な書類を様々な機関から収集する必要があります。これらの多くは平日の日中にしか対応しておらず、多大な時間と手間がかかります。この煩雑な手続きを、すべて専門家に代行してもらえるメリットは非常に大きいです。
5.税務調査が不安ですか?
相続税は、税務調査に入られやすい税金の一つです。税理士が作成した申告書は、それだけで社会的信用が高まり、調査の対象となる確率が下がると言われています。また、万が一調査の対象となった場合でも、専門家としてあなたの代理人となり、堂々と税務署と交渉してくれます。この「安心感」も、費用を払う大きな価値の一つです。
メリット・デメリットを徹底比較【自分で申告 vs 税理士に依頼】

自分で申告する場合
- メリット
税理士報酬がかからない。これに尽きます。 - デメリット
土地評価などで節税の機会を逃し、税金を過大に払うリスク。
申告の誤りで、後に加算税や延滞税といったペナルティが課されるリスク。
膨大な資料収集と複雑な計算に、多くの時間と労力を奪われる。
税務調査の対象となる確率が上がり、その際に一人で対応しなければならない。
税理士に依頼する場合
- メリット
専門的な知識を駆使した、最大限の節税が期待できる。
正確で安心な申告による、追徴課税のリスク回避と安心感。
煩雑な手続きから解放され、時間的・精神的な負担が大幅に軽減される。
税務調査への強力な防御壁となる。 - デメリット
費用(報酬)がかかる。
それでも自分で申告したい方へ:注意点と準備
もし、ここまでの内容を読んだ上で、ご自身のケースは非常にシンプルであり、「自分で申告する」と決めた方は、国税庁のウェブサイトや電話相談センターなどを最大限に活用しましょう。何よりも重要なのは、申告期限(被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内)です。この期限に遅れるとペナルティが課されますので、計画的に進めることが不可欠です。
「相続税申告、自分でやるか税理士に頼むか」まとめ
- 相続税の申告は、条件が揃えば自分でできるが、多くのケースで税理士が関与している。
- 「土地」が含まれる場合は、税理士に依頼するだけで納税額が大きく変わる可能性が高い。
- 遺産総額が大きい、相続人が多い、時間がない、税務調査が不安、といった場合も専門家に頼るべき。
- 自分で申告する最大のメリットは費用の節約だが、税金を払いすぎるリスクやペナルティのリスクを伴う。
- 税理士への報酬は、安心と適正な納税を実現するための「投資」と考えることができる。
最終的にどちらを選ぶかは、あなた自身の状況と価値観によります。しかし、少なくとも一度、税理士の無料相談などを利用して「自分の場合、税理士に頼むとどうなるのか?」という話を聞いてから判断しても、決して遅くはありません。
当サイト「税理士コラボネット」では、相続税申告に関する初回相談を無料で受け付けている先生方もご紹介しています。後悔のない選択をするために、ぜひお気軽にご相談ください。
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