ホーム » お役立ち情報 » 小規模企業共済とiDeCo、どっちがお得?個人事業主の退職金作り

小規模企業共済とiDeCo、どっちがお得?個人事業主の退職金作り

2025年12月25日

「将来の年金が少なくて不安。自分で退職金を作りたいけど、何から始めればいい?」「小規模企業共済とiDeCo、両方節税になるって聞くけど、どっちがお得なの?」「資金繰りが厳しくなったらどうしよう?一度始めたら止められないの?」

こんにちは。「税理士コラボネット」の小林です。会社員には厚生年金や退職金がありますが、個人事業主にはそれがありません。老後の生活を守るためには、自分で資金を準備する必要があります。

そこで強力な味方となるのが、国の制度である「小規模企業共済」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。どちらも掛金が全額控除になる最強の節税ツールですが、それぞれに特徴があり、「どちらを優先すべきか」は事業の状況によって異なります。

この記事では、この2つの制度を徹底比較し、個人事業主が選ぶべき「最強の退職金ポートフォリオ」を提案します。
「とりあえずiDeCoを始めたけど、実は小規模企業共済の方が合っていた…」と後悔しないよう、それぞれのメリット・デメリットと出口戦略(受け取り方)までしっかり解説します。

目次

個人事業主の退職金問題、「小規模企業共済」と「iDeCo」で解決!

まず、なぜこの2つの制度が個人事業主に選ばれているのか、その共通点と決定的な違いを理解しましょう。

そもそも、なぜこの2つが最強の節税策なのか?(全額所得控除)

NISA(ニーサ)などの投資制度との最大の違いは、「掛金が全額所得控除になる」という点です。

  • NISA: 利益にかかる税金がゼロになる(運用益非課税)。
  • 小規模企業共済・iDeCo: 掛金そのものが所得から引かれるため、今年の税金(所得税・住民税)が安くなる。

例えば、課税所得400万円(税率約30%)の人が月5万円積み立てると、年間で約18万円も税金が安くなります。積み立てるだけで利回り30%が確定しているようなものであり、やらない手はありません。

結論から言うと…「資金の自由度」で選ぶのが正解

両方満額やるのが理想ですが、資金に限りがある場合、どちらを優先すべきか。
結論は、「小規模企業共済」を優先すべきです。
理由はシンプルで、「資金の流動性(いざという時に現金化できるか)」に圧倒的な差があるからです。個人事業主は収入が不安定になりがちなので、この「自由度」が命綱になります。

【徹底比較】小規模企業共済 vs iDeCo スペック一覧表

まずは2つの制度のスペックを比較してみましょう。

比較項目 小規模企業共済 iDeCo (イデコ)
掛金上限(月額) 70,000円
(年84万円)
68,000円
(年81.6万円)
節税効果 掛金全額控除 掛金全額控除
運用商品 元本保証
(予定利率1.0%程度)
投資信託
(元本変動あり)
途中解約 可能
(20年未満は元本割れ)
原則不可
(60歳までロック)
資金調達 貸付制度あり
(即日融資可)
なし
受取時の税制 退職所得扱い 退職所得扱い

小規模企業共済のメリット・デメリット

「経営者の退職金制度」と呼ばれる小規模企業共済。その実力を見ていきましょう。

メリット:安心の元本保証と「貸付制度」で資金繰りもカバー

最大のメリットは、積み立てた掛金の範囲内で事業資金を借り入れできる「契約者貸付制度」があることです。
無担保・無保証人で、最短即日で借りられるため、急な支払いやつなぎ資金が必要になったときに非常に助かります。銀行融資よりも圧倒的に手軽な「会社のお守り」になります。
また、運用は安全確実に行われるため、基本的に元本割れのリスクが低く(解約手当金は20年以上で元本以上)、計画的に資産形成ができます。

デメリット:加入期間が短い(20年未満)と元本割れのリスク

途中解約(任意解約)が可能ですが、加入期間が20年未満(240ヶ月未満)で解約すると、戻ってくるお金が掛金総額を下回ります(元本割れ)。
ただし、「廃業」して受け取る場合は、期間に関係なく(6ヶ月以上あれば)元本割れしません。あくまで「事業を続けているのに辞める(任意解約)」場合のペナルティです。

おすすめな人:事業資金の融通も確保したい人

「今は余裕があるけど、将来資金繰りが厳しくなるかもしれない」という不安がある方は、解約や貸付ができる小規模企業共済が安心です。

iDeCo(イデコ)のメリット・デメリット

次に、老後資金作りの王道、iDeCo(個人型確定拠出年金)です。

メリット:運用益が非課税!投資効果で資産を増やせる可能性

iDeCoは、自分で選んだ投資信託などで運用します。株価が上がれば資産が増え、その運用益には税金がかかりません(通常は20.315%かかる)。
長期間(20年、30年)運用することで、複利効果により掛金以上の大きな資産を作れる可能性があります。もちろん、定期預金タイプを選んで元本確保にすることも可能です。

デメリット:原則60歳まで「絶対におろせない」資金拘束

個人事業主にとって最大のリスクがこれです。iDeCoは「年金」なので、原則として60歳になるまで、どんなにお金に困っても引き出すことができません。
事業が傾いても、自分が病気になっても、iDeCoのお金は使えません。この「資金拘束」のリスクは、会社員以上に重く考える必要があります。
また、加入時や毎月の手数料がかかる点も地味なデメリットです。

おすすめな人:余裕資金で積極的に資産形成したい人

「当面の運転資金は十分確保できている」「60歳まで絶対に使わないお金がある」という方は、iDeCoの非課税メリットを活かして積極的に増やすのがおすすめです。

どっちを優先?個人事業主のための最強ポートフォリオ

両方の特徴を踏まえた、おすすめの加入ステップです。

ステップ1:まずは「小規模企業共済」で守りを固める

まずは小規模企業共済に加入し、無理のない範囲(月1万円~)から始めましょう。
資金繰りに困ったときの「貸付」という保険機能を確保しつつ、節税メリットを享受します。掛金の増減はいつでも可能なので、調子が良いときは月7万円(MAX)まで増額し、厳しいときは1,000円まで下げることもできます。

ステップ2:余裕があれば「iDeCo」で攻める(併用可能!)

小規模企業共済を満額(月7万円)やってもまだ資金に余裕がある、あるいはもっと積極的に運用で増やしたい場合は、iDeCoを追加します。
小規模企業共済とiDeCoは併用可能です。両方満額なら、月額合計13万8,000円、年間165万6,000円もの所得控除を作ることができます。これは驚異的な節税効果です。
個人事業主の節税対策ベスト10 | 伸びている経営者が必ずやっているキャッシュ最大化術

国民年金基金との組み合わせ(iDeCo枠の共有に注意)

もう一つ、「国民年金基金」という制度もありますが、これはiDeCoと枠(月額6.8万円)を共有します。
国民年金基金は「終身年金」が魅力ですが、インフレに弱い(固定金利)という弱点もあります。インフレ対策ならiDeCo(株式運用)、長生きリスク対策なら国民年金基金、と使い分けましょう。

知っておきたい出口戦略(受け取り方)の違い

積み立てたお金は、最後に戻すときに税金がかかります。出口戦略も重要です。

廃業・退職時の税金はどうなる?(退職所得控除の活用)

小規模企業共済(廃業時)やiDeCo(60歳以降)で一括で受け取る場合、どちらも「退職所得」扱いになります。
退職所得は税制優遇が非常に大きく、「退職所得控除」という枠内であれば税金がかかりません。

  • 勤続(加入)20年以下: 40万円 × 年数
  • 勤続(加入)20年超: 800万円 + 70万円 × (年数-20年)

例えば30年加入していれば、1,500万円までは無税で受け取れます。

法人成りした時の扱いは?

  • 小規模企業共済: 個人事業を廃業して法人成りした場合、解約手当金を受け取ることもできますが、「契約者の地位」を引き継いで継続することも可能です(役員になればOK)。
  • iDeCo: そのまま個人として継続可能です(掛金の上限が変わる場合あり)。

法人化を視野に入れている場合でも、小規模企業共済は無駄になりません。
法人化のベストタイミングは?売上・利益いくらから?プロの判断基準

「小規模企業共済とiDeCo」まとめ

  • 共通点:掛金が全額所得控除になる最強の節税ツール。
  • 小規模企業共済:元本保証、貸付制度あり、途中解約可。流動性が高い。
  • iDeCo:運用益非課税、60歳までロック。資産形成向け。
  • 優先順位:資金繰りに対応できる「小規模企業共済」が先。余裕があれば「iDeCo」。
  • 出口:どちらも「退職所得」として受け取れば税負担は軽い。

「節税」と「老後資金」、そして「万が一の資金繰り」。これらを同時に解決できる小規模企業共済は、個人事業主にとって必須の装備と言えます。
まずは資料請求や銀行窓口で、小規模企業共済の申し込みから始めてみてはいかがでしょうか。

税理士探しのご相談はこちら

「個人事業主の退職金」に関するよくある質問

A.節税(所得控除)のメリットはありません。税金がゼロなら控除しても意味がないからです。ただし、将来のための積立としては意味があります。資金が厳しいなら、赤字の年は掛金を最低額(1,000円や5,000円)まで減額して継続することをおすすめします。

A.税率30%(所得税20%+住民税10%)の人で試算すると、合計掛金は年額約165万円。これに対する節税額は年間約50万円にもなります。利回りに換算すると驚異的な数字です。資金に余裕があるなら併用が最強です。

A.はい、どちらも可能です。小規模企業共済は500円単位で増減額でき、支払いを止める「掛金止め」も可能です(再開も可)。iDeCoも年1回金額変更が可能で、加入者資格を維持したまま掛金を0円にする(運用指図者になる)こともできます。

A.積み立てた掛金の範囲内(7~9割程度)で、事業資金を借り入れできる制度です。最大の特徴は「審査がない」こと。自分が積み立てたお金を担保にする形なので、窓口に行けば即日(または数日)で借りられます。金利も低く、銀行融資が難しいときの命綱になります。

A.iDeCoは従業員や専従者も加入できます(各自で申し込み)。一方、小規模企業共済は原則として「事業主(経営者)」と「共同経営者」しか加入できません。従業員や単なる専従者は加入不可です。

A.はい、あります。投資信託で運用する場合、市場環境によっては資産が減る(元本割れ)リスクがあります。絶対に損をしたくない場合は、商品選びで「定期預金」タイプを選べば元本は確保されますが、インフレリスクには弱くなります。

A.小規模企業共済は、法人成りして役員になれば契約を引き継げます。あるいは、個人事業廃業として解約手当金を受け取り、それを法人の資本金に充てることも可能です。iDeCoは、法人の役員として加入を継続できます(掛金上限は月2.3万円等に変わる場合があります)。

A.いいえ、事業の「経費」ではありません。個人の「所得控除(小規模企業共済等掛金控除)」として処理します。したがって、事業用口座から引き落とした場合の勘定科目は「事業主貸」となります。決算書の経費欄には載せられませんので注意してください。
個人事業主は売上いくらで税理士に頼むべき?依頼するメリットと費用相場

A.あります。特に小規模企業共済は加入年齢制限がなく、60歳以上でも加入可能です。70歳まで事業を続けるなら、10年間で掛金を全額控除しつつ退職金を作れます。iDeCoも加入可能年齢が65歳まで拡大されましたが、受給開始が遅くなる点には注意が必要です。

A.小規模企業共済は、中小機構と業務委託契約を結んでいる団体(商工会、商工会議所、青色申告会など)や金融機関の窓口で申し込みます。iDeCoは、証券会社や銀行などの運営管理機関を選んで、ネットや窓口で申し込みます。SBI証券や楽天証券などのネット証券が手数料も安く人気です。

この記事に関するタグ一覧

【プロが語る】創業融資の成功は「事業計画書」と「税理士」で9割決まる!

素晴らしいビジネスアイデアを思いつき、いざ起業しようとした時、多くの人が直面するのが「自己資金の壁」です。その夢を実現するための鍵となるのが、日本政策金融公庫な...

あわせて読みたい

税理士ドットコムの評判は?メリット・デメリットと賢い使い方を徹底解説

個人事業主におすすめの会計ソフトは?

freee会計(個人事業主向け)とは?料金・特徴・メリット/デメリットを徹底解説

マネーフォワードクラウド確定申告とは?料金・特徴・メリットを徹底解説

マネーフォワード クラウド会計(法人向け)とは?料金・特徴・メリットを徹底解説

やよいの青色申告オンラインとは?料金・特徴・メリットを徹底解説

Google検索で1位を量産
オープンから半年
月間10,000PV達成の
WEBメディア
”税理士コラボネット” 運営会社が作る
税理士専門
ホームページ制作
詳しくはこちら 

近くのおすすめ税理士事務所・
会計事務所一覧

北海道・東北 札幌★★★青森★★★盛岡★★★仙台★★★秋田★★★山形★★★福島★★★郡山★★★
関東 水戸★★★宇都宮★★★前橋★★★高崎★★★さいたま★★★川口★★★川越★★★所沢★☆☆越谷★★★千葉★★★船橋★★☆柏市★★★松戸★★☆市川★★★
東京都 千代田区★★★中央区☆☆☆港区★★★新宿区★★★文京区NEW台東区NEW墨田区★★★江東区★★☆品川区★★★目黒区★★★大田区★★★世田谷区★★★渋谷区NEW中野区★★☆杉並区★★★豊島区NEW北区★★☆荒川区★★★板橋区★★☆練馬区★★★足立区NEW葛飾区NEW江戸川区★★☆八王子★★★町田★★★
神奈川県 横浜★★★川崎★★★相模原★★★藤沢★★★横須賀★★★小田原★★★
甲信越 新潟★★☆長岡★★★上越★★★甲府★★★長野★★★
北陸 富山県★★★富山市★★★石川県★★★金沢★★★福井県★★★福井市★★★
東海 岐阜★★★静岡★★★浜松★★★名古屋★★★豊橋★☆☆春日井★★☆豊田NEW岡崎NEW一宮NEW津市★★★四日市NEW
近畿 大津★★★京都★★★大阪★★★堺市★★★東大阪★★★岸和田★★☆枚方★★★高槻★★★豊中★★★吹田★★★神戸★★★尼崎★★★西宮★☆☆姫路★★★奈良★★★和歌山★★★
中国・四国 鳥取★★★松江★★★岡山★★★倉敷★★★広島★★★福山★★★山口★★★徳島★★★高松★★★松山★★★高知★★★
九州・沖縄 北九州★★★福岡★★★久留米★★★佐賀☆☆☆ 長崎★★★熊本★★★大分★★★宮崎★★★鹿児島★★★那覇★★★

Contact
お問い合わせ