補助金・助成金を受け取ったら確定申告は必要?課税・非課税の判定と正しい仕訳方法

「事業再構築補助金が入金されたけど、これって売上になるの?」「助成金をもらったら税金がかかるって本当?」「仕訳の仕方がわからなくて、確定申告が不安…」
こんにちは。「税理士コラボネット」の小林です。事業を拡大したり、経営を安定させたりするために「補助金」や「助成金」は非常に心強い存在です。しかし、いざ入金された段になって、「あれ?このお金の税金ってどうなるんだろう?」と慌ててしまう個人事業主の方は少なくありません。
実は、国や自治体から受け取るお金には、「税金がかかるもの」と「かからないもの」があり、さらに「いつの売上(収入)として計上するか」にも厳密なルールがあります。ここを間違えると、後で税務調査で指摘され、ペナルティ(延滞税など)を支払うことになりかねません。
この記事では、補助金・助成金を受け取った際の「確定申告の要・不要判定」から、「正しい計上時期」、「具体的な仕訳方法」、そして「消費税の取り扱い」まで、専門家の視点からわかりやすく解説します。
目次
補助金・助成金は「もらった年」の確定申告が必要?
結論から言うと、事業に関連して受け取った補助金・助成金のほとんどは「課税対象」であり、確定申告が必要です。
原則は「課税対象」。事業所得(または雑所得)として計上する
小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金、雇用調整助成金など、事業の維持・拡大や雇用のために受け取ったお金は、税務上「収入」とみなされます。
これらは本業の売上(商品販売やサービス提供の対価)とは異なりますが、事業に付随する収入として、確定申告書では「事業所得」の「雑収入」欄に計上するのが一般的です。
「もらったお金だからラッキー」ではなく、「利益が増えた」と見なされるため、その分だけ所得税や住民税、国民健康保険料が高くなる可能性があります。受給した年は、税金が増えることを想定して資金を残しておく必要があります。
「非課税」になる給付金の例外パターン(生活支援目的など)
一方で、例外的に「税金がかからない(非課税)」とされるものもあります。主に「生活支援」や「見舞金」の性質を持つものが該当します。
- 過去の例: 特別定額給付金(国民一人一律10万円)、子育て世帯への臨時特別給付金など。
- 最近の例: 物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金に基づく給付金(住民税非課税世帯向けなど)のうち、法律で非課税と定められたもの。
これらは事業の収入ではないため、確定申告に含める必要はありません。ただし、制度ごとに課税・非課税の扱いが異なる場合があるため、募集要項や通知書を必ず確認しましょう。
間違いやすい!収入に計上する「タイミング」のルール

補助金等の処理で最もミスが多いのが、「いつの収入にするか(計上時期)」です。
「通帳に入金された日」に計上している方、いませんか? 実はそれ、間違いかもしれません。
「入金された日」ではなく「交付決定通知があった日」が原則
税法では、収入は「権利が確定した日」に計上するというルール(権利確定主義)があります。
補助金・助成金の場合、申請をして審査に通り、「交付決定通知書(または支給決定通知書)」が届いた日に受け取る権利が確定します。
したがって、たとえ入金が翌年になったとしても、通知が届いた日付の年の収入として申告しなければなりません。この原則は、法人だけでなく個人事業主(所得税)にも適用されます。
参照:法人が交付を受ける助成金等の収益計上時期について|近畿税理士会姫路支部
- 例: 12月20日に「交付決定通知」が届く ⇒ 翌年1月15日に口座に入金された。
- 正解: 通知が届いた「12月20日」を含む年(前年)の収入として申告する。
これを間違えて入金日で申告してしまうと、「売上の計上漏れ」として税務署から指摘されるリスクがあります。特に年末付近に通知が来た場合は要注意です。
年をまたぐ場合の処理(未収入金の計上)に注意
上記の例のように、通知は来たが入金がまだの場合、決算では以下のような処理を行います。
- 通知日(12/20): まだお金は入っていませんが、収入を計上します。
(借方)未収入金 / (貸方)雑収入 - 入金日(1/15): お金が入ってきたら、未収入金を消し込みます。
(借方)普通預金 / (貸方)未収入金
こうすることで、正しい年に税金を計算することができます。
※例外として、経費支出額の実績に基づいて事後的に金額が確定するタイプの補助金(小規模事業者持続化補助金など)の場合は、「額の確定通知」を受けた日が計上時期となるケースもあります。通知書の種類(交付決定か、額の確定か)をよく確認してください。
これで迷わない!補助金・助成金の正しい仕訳・勘定科目
では、具体的な帳簿のつけ方(仕訳)を見ていきましょう。ここではクラウド会計ソフトなどでの一般的な入力方法を紹介します。
基本的な仕訳:「雑収入」で処理するのが一般的
補助金や助成金は、本業の売上(売上高)と区別するために、「雑収入」という勘定科目を使います。
- 仕訳例(100万円が入金された場合)
- (借方)普通預金 1,000,000 / (貸方)雑収入 1,000,000
- 摘要:〇〇補助金
もし「助成金収入」や「補助金収入」といった勘定科目を自分で作っている場合は、そちらを使っても構いません。大切なのは、本業の売上と混ざらないようにすることです。
固定資産(機械など)を購入した場合の「圧縮記帳」とは?
「ものづくり補助金」などで高額な機械装置や車両を購入した場合、補助金収入に対して一度に多額の税金がかかると、手元の資金が減ってしまい、設備投資の効果が薄れてしまいます。
これを防ぐために、「圧縮記帳(あっしゅくきちょう)」という税務上の特例が認められています。
- 圧縮記帳の仕組み:
- 受け取った補助金の額だけ、購入した固定資産の取得価額を減らします。
- これにより、「補助金収入(利益)」と「圧縮損(経費)」が相殺され、受け取った年の税金負担をなくす(先送りする)ことができます。
- その代わり、翌年以降の減価償却費が減るため、トータルで払う税金は変わりませんが、資金繰りが楽になります。
圧縮記帳は計算が複雑で、確定申告書への添付書類も必要になります。この制度を利用したい場合は、税理士に相談することを強くおすすめします。
【要注意】消費税の確定申告への影響

消費税の課税事業者(消費税を納めている人)は、補助金の扱いにもう一つ注意点があります。
補助金収入自体は「不課税(消費税がかからない)」
消費税は「対価を得て行う取引」にかかります。国や自治体から受け取る補助金は、何かを売った対価ではないため、消費税はかかりません(不課税取引)。
会計ソフトに入力する際は、税区分を「対象外」や「不課税」に設定してください。間違えて「課税売上」にしてしまうと、無駄な消費税を払うことになります。
補助金で買った経費にかかる消費税の処理
ここは少し専門的ですが、非常に重要です。
補助金を使って経費(課税仕入れ)を支払った場合、その経費にかかった消費税は、原則として全額を「仕入税額控除(支払った消費税として売上の消費税から引くこと)」が可能です。
しかし、「税込経理」を採用している場合や、特定の補助金においては、計算方法が異なる場合があります。
また、補助金は適正化法に基づき厳格に運用されており、返還が必要になった場合など特殊なケースでは消費税の調整が必要になることもあります。
参照:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 | e-Gov法令検索
個人事業主がよく利用する制度の課税・非課税リスト
よくある補助金・助成金について、一般的な課税関係をまとめました。(※個別の公募要領等により異なる場合があります)
課税対象(事業所得の雑収入)
以下のものは、基本的にすべて課税対象です。確定申告に含めるのを忘れないようにしましょう。
- 小規模事業者持続化補助金
- IT導入補助金
- ものづくり補助金
- 事業再構築補助金
- 雇用調整助成金
- キャリアアップ助成金
- 両立支援等助成金
- 各自治体の休業協力金・事業復活支援金など
非課税(申告不要)
以下のものは、政策的な配慮から非課税とされています。
- 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(個人への支給分)
- 子育て世帯への臨時特別給付金
- 低所得世帯向けの給付金
※「事業主に支給されるもの」は課税、「個人(家計)に支給されるもの」は非課税、という傾向がありますが、名称だけで判断せず、必ず支給元の案内を確認してください。
「補助金・助成金の確定申告」まとめ
- 原則:事業に関連する補助金・助成金は「課税対象」。確定申告が必要。
- 時期:入金日ではなく「交付決定通知日」(または額の確定日)に計上する。
- 仕訳:勘定科目は「雑収入」。消費税区分は「不課税(対象外)」。
- 特例:固定資産を購入した場合は「圧縮記帳」で税金の先送りが検討できる。
- 注意:申告漏れはペナルティの対象。不明点は必ず税理士へ相談を。
補助金は「もらって終わり」ではありません。正しく申告して納税するまでがセットです。
せっかく事業のために得た資金を、税務調査の追徴課税で減らしてしまうことのないよう、正しい知識で処理を行いましょう。
日々の記帳をクラウド会計ソフトで効率化し、補助金の管理もしっかり行うことをおすすめします。
「補助金の税金」に関するよくある質問
補助金の額に、あなたの「所得税率+住民税率」を掛けた金額がおおよその増える税額です。例えば、税率が所得税10%・住民税10%の人が100万円の補助金をもらった場合、約20万円税金が増える計算になります(経費を考慮しない場合)。国民健康保険料も上がる可能性があるため、受給額の3割程度は納税用に残しておくと安心です。
補助金は「雑収入」として売上等の利益と合算されます。補助金を足してもなお、事業全体の所得が赤字(または各種控除以下)であれば、所得税はかかりません。ただし、均等割の住民税(年数千円)などは発生する場合があります。
多くの補助金は「後払い」です。先に経費を使った年は通常通り経費計上し、翌年以降に「交付決定通知」や「額の確定通知」が届いた時点で収入(雑収入)として計上します。経費の発生年と収入の計上年がズレることで、一時的に税負担が重くなる場合があるため注意が必要です。
補助金収入と同額を「圧縮損(経費)」として計上することで、受給した年の利益を圧縮し、税金が一気に増えるのを防げます。トータルで払う税金は変わりませんが、手元のキャッシュを減らさずに済むため、資金繰りが安定するメリットがあります。ただし、翌年以降の減価償却費は少なくなります。
補助金申請のために支払った着手金や成功報酬、書類作成費用などは、全額「支払手数料」や「業務委託費」として必要経費に計上できます。これらは補助金収入と対応する経費となるため、漏れなく計上することで税負担を抑えられます。節税対策としても重要です。
事業に関連して受け取った補助金(持続化補助金など)は、原則として「事業所得」の雑収入です。一方、事業とは無関係な個人的な給付金や、ふるさと納税の返礼品などは「一時所得」になる場合があります。事業継続のための補助金であれば、事業所得(または副業なら雑所得)として申告するのが基本です。
速やかに「修正申告」を行ってください。税務署から指摘される前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税などのペナルティが免除または軽減される場合があります。放置すると延滞税も増え続けるため、気づいた時点で早急に対応しましょう。
補助金収入そのものは「不課税」なので、消費税の計算には含めません(売上にカウントしません)。ただし、補助金で購入した資産等の消費税区分や、簡易課税制度を選択している場合など、全体の計算には影響しませんが、補助金収入自体に消費税をかけて申告しないよう注意が必要です。
開業前であっても、その補助金が開業準備行為(事業)に関連するものであれば、開業後の最初の確定申告で「事業所得」として計上する必要があります。開業届を出す前の収入だからといって申告不要にはなりません。
圧縮記帳は、「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」の作成など、高度な税務知識が必要です。会計ソフトに入力するだけでは完結しません。要件を満たしているかの判定も難しいため、ご自身で行うよりも税理士に依頼することを強くおすすめします。





