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屋号の決め方と、銀行口座の開設方法|屋号あり・なしのメリットは?

2025年12月25日

「個人事業主として独立するけど、屋号ってつけたほうがいいの?」「かっこいい名前をつけたいけど、何か決まりはある?」「事業用の銀行口座を作りたいけど、屋号付き口座の作り方がわからない」

こんにちは。「税理士コラボネット」の小林です。開業準備を進める中で、自分のビジネスにどんな名前をつけるか(屋号)は、経営者にとって最初の一大イベントであり、悩みどころでもありますよね。

屋号は単なる「名前」ではありません。お客様からの信頼を得るための看板であり、事業用のお金を管理するための大切なツールでもあります。適当につけてしまうと、後で銀行口座が作れなかったり、お客様に覚えてもらえなかったりと、思わぬ損をすることもあります。

この記事では、個人事業主の「屋号」について、そのメリットや失敗しない決め方のコツ、そして開業時の必須タスクである「屋号付き銀行口座」の開設手順まで、専門家の視点からわかりやすく解説します。

この記事を読めば、自信を持って自分の看板(屋号)を掲げ、スムーズに事業をスタートできるようになります。

目次

そもそも「屋号」とは?つける必要はある?

まず、屋号(やごう)とは何なのか、基本的なところから整理しましょう。

個人事業主にとっての「会社名」。ペンネームとの違い

屋号とは、個人事業主がビジネスを行う上で使用する「商業上の名前」のことです。法人でいうところの「会社名」にあたります。
例えば、「山田太郎」さんがデザイン事務所を開業する場合、「ヤマダデザイン」や「クリエイティブ・ヤマダ」といった名称が屋号になります。

ペンネーム(筆名)やハンドルネームと混同されがちですが、屋号は税務署への届出や銀行口座の名義、請求書への記載など、公的なビジネスシーンで使用される点が異なります。

屋号なし(本名)でも活動は可能。職業による傾向

実は、屋号をつけることは法律上の義務ではありません。屋号をつけず、本名(氏名)だけで活動しても何の問題もありません。
職業によっても傾向が分かれます。

  • 屋号をつけることが多い: 飲食店、小売店、美容室、デザイン事務所、工務店など(「〇〇屋」「〇〇美容室」など)。
  • 屋号をつけないことが多い: ライター、プログラマー、コンサルタント、士業など(個人のスキルを売る仕事)。

とはいえ、屋号をつけることには、単なる「名前」以上の大きなメリットがあります。

屋号をつける3つの大きなメリット

なぜ多くの個人事業主があえて屋号をつけるのでしょうか。主なメリットは3つあります。

1. 顧客からの社会的信用が得やすい

本名だけで活動していると、どうしても「個人が片手間でやっている」という印象を持たれがちです。
屋号があることで、「しっかりと事業として営んでいる」という姿勢が伝わり、お客様や取引先からの信頼度が上がります。特に新規の取引先を開拓する際、屋号がある名刺の方がビジネスライクな印象を与えられます。

2. 「屋号付き銀行口座」が開設でき、公私混同を防げる

これが実務上、最大のメリットかもしれません。
屋号をつけると、銀行で「屋号+個人名(例:ヤマダデザイン 山田太郎)」名義の事業用口座を開設することができます。
プライベートの生活費口座と、事業用の売上・経費口座を明確に分けることは、経理を正確に行い、確定申告をスムーズにするための第一歩です。税務調査が入った際も、公私混同していないことを証明しやすくなります。

3. ブランドイメージが伝わり、覚えてもらいやすい

「山田太郎」という名前だけでは何をしている人かわかりませんが、「ヤマダウェブ制作」という屋号なら、一発で業務内容が伝わります。
屋号は、あなたのビジネスの「何屋さんか?」を伝える看板であり、ブランドイメージを構築するための重要な要素です。覚えやすい屋号は、口コミでの紹介やリピートにもつながります。

失敗しない!センスの良い屋号の決め方5つのコツ

「じゃあ、どんな屋号にすればいいの?」と悩む方へ、失敗しないネーミングの5つのポイントを紹介します。

① 事業内容が一目でわかる(〇〇デザイン、〇〇屋など)

奇をてらったかっこいい横文字も素敵ですが、パッと見て「何をしているお店か」がわからないと、お客様を逃してしまう可能性があります。
「〇〇カフェ」「〇〇整骨院」「〇〇行政書士事務所」のように、業種やサービス内容を屋号に含めるのが王道かつ最強です。

② 読みやすく、覚えやすい(長すぎない、難読漢字を避ける)

電話口で名乗ったときに聞き返されたり、領収書の宛名書きで相手を困らせたりするような名前は避けましょう。

  • NG例: 難読漢字、長すぎる英語、発音しにくい造語
  • OK例: 親しみやすいひらがな、短くリズムが良い言葉

誰でも読めて、一度聞いたら忘れない。そんな名前が理想です。

③ インターネット検索で有利か(他とかぶらないか検索してみる)

候補が決まったら、必ずGoogleで検索してみましょう。
もし、同業他社ですでに有名な屋号が存在していたり、検索結果にネガティブな言葉が並ぶような名前だったりする場合は、避けたほうが無難です。
また、オリジナリティのある名前の方が、将来的に検索されたときに上位表示されやすくなります(SEO効果)。

④ ドメイン(URL)が取得できるか確認する

ホームページを作る予定があるなら、屋号と同じドメイン(.comや.jpなど)が空いているかもチェックしましょう。
屋号とドメインが一致していると、信頼性が高まります。

⑤ 【注意】使ってはいけない文字・言葉(会社、法人、銀行など)

屋号は自由につけられますが、法律で禁止されている言葉があります。

  • 「会社」「法人」: 個人事業主なのに「〇〇会社」「〇〇法人」と名乗ることは、会社法で禁止されています(誤認させるため)。
  • 「銀行」「証券」「病院」: これらも法律で定められた組織しか使えません。
  • 商標登録されている名称: 有名なブランド名など、他人の商標権を侵害する名前はトラブルの元です(特許庁のJ-PlatPatで検索できます)。

意外と簡単!屋号の登録・変更手続き

「屋号を決めたら、どこに登録すればいいの?」と身構える必要はありません。手続きは拍子抜けするほど簡単です。

開業届の「屋号」欄に書くだけでOK

屋号の登録は、税務署に提出する「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」にある「屋号」という欄に、決めた名前を記入して提出するだけです。
これだけで登録完了です。費用もかかりませんし、登記のような複雑な手続きも不要です。
開業届と青色申告承認申請書の書き方|提出のタイミングと注意点

途中で屋号を変えたい場合はどうする?(確定申告書で変更可)

「最初に決めた屋号が気に入らなくなった」「事業内容が変わった」という場合も、変更手続きは簡単です。
特別な届出書を出す必要はなく、次の確定申告書の「屋号」欄に新しい屋号を書いて提出するだけで変更扱いになります。
ただし、銀行口座の名義変更や、名刺・看板の作り直しなど、実務的な手間はかかるので、頻繁な変更はおすすめしません。

個人事業主の必須アイテム!屋号付き銀行口座の開設方法

屋号を決めたら、次にやるべきは「屋号付き銀行口座」の開設です。

なぜ事業用口座を分けるべきなのか?(経理の効率化)

個人の生活費口座で事業の売上・経費も管理していると、確定申告の際、「これは事業の入金?それともプライベートの振込?」といちいち仕訳ける作業が発生し、地獄を見ます。
事業用口座を作れば、その口座の動き=事業のお金、と明確になり、クラウド会計ソフトと連携させるだけで経理がほぼ自動化できます。
個人事業主の節税対策ベスト10 | 伸びている経営者が必ずやっているキャッシュ最大化術

開設に必要なもの(「開業届の控え」が絶対条件!)

屋号付き口座を作るには、通常以下の書類が必要です。

  • 本人確認書類: 運転免許証、マイナンバーカードなど。
  • 印鑑: 銀行印(個人の印鑑でも可ですが、事業用に分けるのがおすすめ)。
  • 開業届の控え(重要): 税務署の受領印が押されたもの。これが「屋号を使って事業をしている証明」になります。

※銀行によっては、屋号の実態を確認するために「屋号が入った公共料金の領収書」や「賃貸借契約書」、「屋号入りの名刺」「ホームページのURL」などを求められる場合もあります。

おすすめはネット銀行?メガバンク?審査の難易度と利便性比較

  • メガバンク・地銀: 信用度は高いですが、開設審査が厳しく、断られるケースも多いです。また、ネットバンキングの利用料が月額数千円かかる場合もあります。
  • ネット銀行(楽天銀行、PayPay銀行、住信SBIなど): 審査が比較的スピーディーで、ネットバンキング利用料も無料のところが多いです。クラウド会計ソフトとの連携もスムーズなので、個人事業主にはネット銀行が圧倒的におすすめです。
  • ゆうちょ銀行: 屋号のみの名義(「ヤマダデザイン」だけ)で振替口座を作れる珍しい銀行ですが、通帳が作れない等の制限があります。

まずは利便性の高いネット銀行で申し込み、事業が軌道に乗って融資などが必要になった段階で、地銀や信金の口座開設を検討するのが良いステップです。

「屋号と銀行口座」まとめ

  • 屋号:個人事業主の「会社名」。信頼性UPやブランド構築に役立つ。
  • 決め方:業種がわかる、覚えやすい名前がベスト。他とかぶらないか検索を。
  • 登録:開業届の「屋号」欄に書くだけ。変更も確定申告書でOK。
  • 口座:屋号付き口座を作れば経理が楽になる。開設には「開業届の控え」が必須。
  • 推奨:まずはネット銀行で事業用口座を作り、会計ソフトと連携させる。

屋号は、あなたのビジネスへの「覚悟」の表れでもあります。
素敵な屋号をつけて、事業用口座を開設すれば、経営者としての意識も一段と高まるはずです。まずは納得のいく名前を考えるところから、開業準備を楽しんでください。

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「屋号と口座」に関するよくある質問

A.はい、基本的に自由です。ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、数字、一部の記号(&など)も使えます。ただし、銀行口座を作る際、銀行によってはアルファベットが使えずカタカナ表記になる場合や、記号が使えない場合があるので、口座開設予定の銀行のルールを事前に確認しておくと安心です。

A.同一地域(近隣)でなければ、法律上は基本的に問題ありません。しかし、ネット検索で他店ばかり表示されたり、お客様が混同したりするデメリットがあります。また、相手がその名前を「商標登録」している場合は商標権の侵害になるリスクがあります。可能な限り、他とかぶらない独自の名前をつけることをおすすめします。

A.はい、可能です。例えば「デザイン業」と「飲食業」など、全く異なる事業を複数行っている場合、それぞれの事業に別の屋号をつけることができます。確定申告書には、メインの屋号を1つ書くか、併記することも可能です。銀行口座も屋号ごとに分けて作ることができます。

A.「事務所」「オフィス」「企画」「本舗」「スタジオ」「カンパニー」などは自由につけられます。ただし、「会社」「法人」「Co., Ltd.」「Inc.」など、法人(会社)であると誤解させる名称は法律で禁止されています。

A.はい、副業であっても開業届を提出していれば、屋号をつけることも、屋号付き口座を作ることも可能です。屋号付き口座を作ることで、副業の収支管理が明確になり、確定申告(雑所得や事業所得)の際もスムーズになります。

A.最近はマネー・ローンダリング対策で審査が厳しくなっており、一部の銀行では個人事業主の屋号付き口座開設を制限している場合があります。また、ゆうちょ銀行の「振替口座」は屋号のみの名義で作れますが、利息がつかない決済専用口座です。一般的な「総合口座(通帳あり)」で屋号付きにするには、「屋号+代表者名」の名義になるのが一般的です。

A.原則として作れません。 ほとんどの銀行で、屋号付き口座の開設には「税務署の受領印がある開業届の控え」の提出が必須条件となっています。屋号付き口座が欲しい場合は、まず税務署に開業届を提出しましょう。

A.必須ではありませんが、取引先からの振込名義と一致させるために変更することをおすすめします。変更するには、銀行窓口で手続きが必要です(新しい屋号が記載された確定申告書の控えなどが必要になる場合があります)。手続きが面倒であれば、新しい屋号で新規口座を開設するのも一つの手です。

A.ロゴマークは名刺や請求書に使えるので、あると信頼性が高まります。商標登録は費用がかかりますが、将来的にブランド化を目指すなら検討すべきです。他社に商標を取られてしまうと、その屋号を使えなくなるリスクがあるからです。事業が軌道に乗ってからでも遅くはありません。

A.銀行口座の名義が「屋号+個人名(ヤマダデザイン 山田太郎)」の場合、振込人は「ヤマダデザイン」だけでも振り込めることが多いですが、銀行のシステムによってはエラーになることもあります。トラブルを防ぐため、請求書には口座名義通り(屋号+個人名)を記載するのが最も確実で親切です。

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